表具師からみた裏打ち作業の本音

裏打ちとは

早速ですが、裏打ちとは、何のことかわかるでしょうか?

裏打ちとは、作品(書や絵)の裏側から、和紙を貼ることによって、作品の耐久性や、作品を綺麗に見せるという目的があります。

書で例えると、墨で文字を書いた後は、紙がくしゃくしゃになってますが、それを
伸ばして、裏側から和紙を付けることで、綺麗なシワのない作品になっていることがあると思いますが、その綺麗になる工程のことを裏打ちといい、その作業自体を裏を打つと言ったりいたします。

また、掛け軸や、額にしたい時などは、掛け軸や、額にするための、一番最初の作業といえるかもしれません。


その裏打ちは、作品の裏側に紙を貼り付ける作業ですので、付ける際には糊が必要になってきます。そして、つける時には、大気に舞っている小さな埃やごみなども、注意をしないと間に入ってしまうことになります。

よくあるのが、糊を付ける際に使用する刷毛の毛が残ってしまい、それが、間に入ってしまい、乾燥して仕上げた時に、毛が入っていたなんてことがあったりいたします。


本来は、ごみや埃は、入ってはいけないし、入らないように作業をしますし、作業環境をそのように整えてから、表具師は作業をしています。

しかし、どうしても入ってしまうことがあります、これは物理的にはいたしかたない事ではあります。一部の表具師さんはそんなことは無いといいますが・・・・よっぽどのケアと作業環境と時間をかけて作業しているのだと思われます。


裏打ち作業の本音・・・裏打ち時のゴミ・埃問題

さて、今回の記事の本題にはいります、表具師の裏打ち作業の本音です。
お客様にご依頼をいただいた中で、一番問題になるのが、この問題です。埃の問題です。この埃の許容範囲が、ごくごく稀ではありますが、表具師と差があるお客さんがおります。

どういうことかといいますと、虫メガネでやっと気づくような、埃を指さして、ごみが入っているといいます・・・・・ 元々、紙自体に入っているチリよりも小さなところを指さして言います・・・


そんな時表具師はなんと思うか??

「事故にあったか・・・」と運が悪いと思っております。 

半紙サイズで1000円もしない裏打ち作業、でも作品は大事なもの・・・・これが一番問題だと思います。
この部分は業界にも責任があると思いますが、1000円の技術料なのに、リスクが1000円以上や10000円以上、時には100000円以上のリスクになるという価格設定はいかがなものか・・・と考えるわけです。

ほこりを入れない方法というのは、色々あると思います、そのためには、より手間と時間をかければかけるほど、埃が入らない確率はあがりますが、そうすると、一枚あたり、10万円以上をいただかないと、仕事としてやっていくことが出来ないと思います。
(ちょっと極端ですが・・・)


現に、掛け軸を制作することはするけど、裏打ちだけするのは、しないという、街の表具師さんもでてきております。 


で、結局なにが言いたいかと言うと、裏打ちを頼む際に、表具師・お客様がしっかりと、裏打ち後の状況や、裏打ちのリスクをしっかり、作業前に打ち合わせをしていく必要なあるのではないかということです。


現在裏打ち作業を取り巻く環境は、年々厳しくなり、安く早くの要望が多くなってきて、表具店もそれに答えるように、早く、安く作業をするようになっています、その中で上記のようなトラブルも増えてきておりますので、表具店・ご依頼主両方で、じっくり、適正価格で作業できるような環境を整えていかねばならないなと思います。

ちなみに、今回の記事は、あくまでも、表具師側からの本音を元に作っております、お客様がどうとかではなく、あくまでも問題提起の一つとして捉えてもらえればと思います。







佐河太心

「日本かけじく協会 代表」 「渋谷の掛け軸屋 代表」「掛軸師」「オルク有限会社 取締役」基本的には掛け軸に関するプロフェッショナル。掛軸に関して知らないことは無い!とは言わないです・・・むしろ、まだまだ勉強中だが、自分の知った知識はどんどん伝えていき、少しでも掛け軸ファンを増やすために日々活動中。

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